WCH25 Day4 Report
東京2025世界陸上の4日目が、2025年9月16日に行われた。
チームジャパンの勢いは止まらない。この日の最終種目・男子110mハードル決勝のど真ん中、5レーンに村竹ラシッドが立った。
1時間40分前に行われた準決勝を13秒17(-0.1)で2着通過し、昨年のパリオリンピックに続くファイナル進出。パリのレーンは一番外側の9レーンだったが、今回は堂々のシードレーンだ。
スタートも決まり、1台目から金メダル争いを演じる。序盤から何度もハードルに脚をぶつけるが、ものともしない。だが、後半で左右のライバルたちがグッと前に出た。そして、フィニッシュ――。

優勝は今季世界リストトップの12秒87を出していたコーデル・ティンチ(アメリカ)で、12秒99で初の世界タイトルを獲得。2位は13秒08でオーランド・ベネット、3位は13秒12でタイラー・メイソンとジャマイカ勢が続いた。村竹は13秒18(-0.3)でフィニッシュ。順位は5位。銅メダルには0.06秒届かなかったが、2年連続の世界大会入賞は輝かしい成果だ。
だが、村竹は天を仰ぎ、トラックに大の字になった。インタビューでは悔しさで嗚咽を漏らす。パリオリンピックからの1年、メダルを目指して厳しいトレーニングと向き合ってきた。この日も大観衆が詰めかけた国立競技場で、それを証明するはずだったが、かなわなかった。
それでも、世界の頂点を決める場でメダルを争う力があることは、誰もが認めたはずだ。「何年かかっても、メダルを取りたい」。村竹は、そう誓った。

準決勝1組には野本周成と、泉谷駿介が出場。野本は13秒30(-0.8)の3着に食い込んだが、着順通過の2着にわずか0.01秒届かず、プラス通過も果たせなかった。泉谷は前日の予選でプラス通過にあと0.01秒届かなかったが、欠場者が出たため繰り上がりで急きょセミファイナル出場が決定した。その一報を聞いたのがレース開始1時間前で、心身の準備が整わない中で迎えていた。泉谷は1台目をぶつけてバランスを崩すと、4台目で転倒。立ち上がって最後まで走り切ったが、途中棄権と判定されている。

男子走高跳決勝には赤松諒一、瀬古優斗が出場した。この種目で日本勢が複数人決勝に進むのは、オリンピックでは3人が入賞した1936年ベルリン大会の例はあるが、世界陸上では史上初となる。その中で、赤松が3年連続で世界大会入賞を成し遂げた。
2日前の予選は無効試技なしという圧巻の内容で、全体1位タイで通過。23年に踏み切り脚の左足小指を疲労骨折し、ボルトで固定している、その影響で試合はもちろん、跳躍練習自体も制限する状況で、予選の跳躍が7月の日本選手権以来のジャンプだった。
決勝は、最初の高さの2m20は1回でクリアしたものの、続く2m24は2回目での成功。9人が残った2m28の結果で入賞者が決まる状況となったが、惜しくも3回ともバーを落とした。それでも、3回失敗した選手がもう1人出て、しかも試技数差でも並び、8位タイ。メダルを見据えていた赤松にとっては悔しさが残るが、それでも8位タイだった前回大会、5位だったパリオリンピックに続く入賞をつかみ取った。
瀬古は2m20を2回目にクリアしたものの、2m24を越えられず。入賞にあと一歩の10位となった。だが、初出場ながらファイナリストとなった経験は大きい。
優勝争いは2m36へと進み、パリオリンピック王者のハミシュ・カー(ニュージーランド)と、ウ・サンヒョク(韓国)との一騎打ちに。カーが一発でクリアし、逆転を狙ってパスをしたウが2m38を2度失敗して決着。カーが2年連続の世界一に輝き、ウは22年オレゴン大会に続く2度目の銀メダルとなった。銅メダルは2m31を2回目にクリアしたヤン・シュテフェラ(チェコ)が手にした。

男子400mは「東京2025世界陸上」にとって、特別な種目の1つである。34年前、旧国立競技場を熱狂させた選手の1人が、男子400mの高野進。短距離種目で日本人初の決勝進出を果たし、7位に入賞した。当時、高野が大会に向けて口にしていた言葉「ファイナリスト」は、今、誰もが当たり前に使っている。
その高野以来2人目の男子400mファイナリストが、2度目の東京2025世界陸上で誕生した。準決勝で中島佑気ジョセフが44秒53をマークし、2着でフィニッシュ。自身としても、23年ブダペスト大会であと一歩のところで逃した大舞台への切符をつかみ、新しくなった国立競技場に、当時に負けない熱狂を巻き起こした。

男子800mでは19歳の落合晃が、日本勢7大会ぶり3人目の出場を果たした。1分46秒78の7着で準決勝進出は果たせなかったものの、大会日本人最高記録(1分47秒16)を上回る力走をみせた。女子三段跳は髙島真織子、森本麻里子はそろって2大会連続で出場。A組の髙島は13m66(-0.3)で13位、B組の森本は13m10(+0.5)で17位と、ともに予選敗退となった。


世界のトップアスリートたちは、4日目もビッグパフォーマンスで大観衆を驚かせた。
女子1500mはフェイス・キピエゴン(ケニア)が序盤からレースを支配し、残り1周で他を圧倒。3分52秒15で3年連続4回目の優勝を飾った。3連覇中のオリンピックを含めると、この種目で7個目の金メダル獲得となる。ドーカス・エウォイが3分54秒92で2位、ネリー・チェプチルチルが4位と、ケニア勢が表彰台独占にあと一歩と迫った。3位には3分55秒16でジェシカ・ハル(オーストラリア)が割って入っている。

男子ハンマー投はイーサン・カッツバーグ(カナダ)が2投目に世界歴代5位の84m70を放ち、パリオリンピックを含む世界大会3連勝を飾った。6投中で無効試技なし。最低記録が81m86で、82m台、83m台が各2度という驚異的なシリーズだった。メルリン・フンメル(ドイツ)が82m77で2位、ベンツェ・ハラス(ハンガリー)が82m69で3位、ミハイロ・コハン(ウクライナ)が82m02で4位と、上位4人が82mオーバーと、史上最高レベルの投げ合いとなった。






