Men's 3000 Metres Steeplechase: Ryuji Miura after finishing the race
東京2025世界陸上の3日目が、2025年9月15日に行われた。
最初の2日間で作られたチームジャパンの好ムードが、しっかりと引き継がれた。この日、日本勢の主役になったのは男子3000m障害の三浦龍司。8分35秒90で2大会連続入賞となる8位に食い込んだが、その内容は前回大会とは比べ物にならないほど“メダル”に近づくものだった。
最初の400mが72秒、1000m通過が3分04秒の超スローペースで、記録よりも勝負重視の展開となる。3連覇を狙うスフィアヌ・バカリ(モロッコ)は最後方、7分52秒11の世界記録保持者であるラメチャ・ギルマらエチオピア勢もそのすぐ前に位置するなか、三浦は集団前方に位置取り、勝負の流れに集中力を研ぎ澄ませる。
2000mを6分01秒で通過し、最後の勝負に向けて緊張感が高まるなか、最後方の優勝候補たちが動き出したのが残り3周に入ってから。前に出る準備を始めると、残り2周で一気にレースが動いた。ダニエル・ミハルスキー(アメリカ)が飛び出すと、それを追ってギルマ、バカリらがポジションをどんどん上げていく。そして、三浦はバカリの背後にピタリとつけ、最後の勝負に臨んだ。
ラスト1周、三浦はバカリをさらに追い、メダル争いに食い込む。最後の水壕を鮮やかに越え、残り100m。だが、最終障害を越えてから接触があって急激にペースダウンし、その末の8位フィニッシュ。メダルを文字通りあと一歩で逃した悔しさを感じながらも、自らの背中を押してくれた大観衆へ、スタンドの各方面に向かって4度、感謝の礼を繰り返した。
壮絶なスパート合戦を制したのは、ジョルディ・ビーミッシュ(ニュージーランド)。8分33秒88で、わずか0.07秒差でバカリの3連覇を阻止、同種目南半球勢初の金メダルに輝いた。エドマンド・セレム(ケニア)が8分34秒56で銅メダルを獲得した。

午前7時30分から行われたのが男子マラソン。前日よりも湿度が下がったとはいえ気温26度のコンディションに、スローペースからのサバイバルレースとなる。
日本勢は25km手前で吉田祐也、29km過ぎで小山直城が先頭集団から後退。最後まで粘ったのは、これがマラソン2回目の近藤亮太だった。10人強の集団の中で37kmからの上りに挑むと、ここからの仕掛け合いで離れはしたが、最後まで前を追う姿勢を見せ続ける。2時間10分53秒の11位。入賞ラインにはあと19秒という熱走を見せた。小山は2時間13分42秒で23位、吉田は2時間16分58秒で34位だった。

女子に続いて国立競技場内のスパート合戦となった優勝争いは、フィニッシュまでもつれる大熱戦に。アルフォンスフェリックス・シンブ(タンザニア)とアマナス・ペトロス(ドイツ)が、ほぼ同時にフィニッシュテープを切った。タイムはともに2時間9分48秒という、史上初の同タイム決着。シンブがわずか0.03秒差で制し、タンザニアにオリンピック、世界陸上を通じて初の金メダルをもたらした。

その後のモーニングセッションでは、今大会3つ目の日本新記録が誕生。女子3000m障害予選3組で齋藤みうが、着順通過の5着にあと一歩の6着ながら9分24秒72をマークした。従来の日本記録は2008年に早狩実紀が作った9分33秒93で、それを17年ぶりに9秒余りも塗り替えた。
男子ハンマー投は日本勢として6大会ぶり4人目の出場を果たした福田翔大が、2投目に72m71を放ち、予選B組15位。決勝への壁は高いが、貴重な経験を積んだ。女子棒高跳も諸田実咲が4m25でB組14位タイ。5月のアジア選手権で両手骨折という重傷を負いながら、この種目の日本勢として16年ぶりの出場と確かな足跡を刻んだ。

イブニングセッションでは、日本勢注目種目の1つである男子110mハードルの予選がスタート。8月に世界歴代11位タイの12秒92をマークして日本人初の12秒台ハードラーとなった村竹ラシッドは5組に登場。13秒22(-0.3)の2着を占め、13秒29(-0.6)で3組4着だった野本周成とともに4日目(9月16日)の準決勝に進出した。だが、前回大会で同種目日本人初入賞となる5位を占めた泉谷駿介は、スタートで大きく出遅れるアクシデント。13秒52(-0.6)の5着にとどまり、プラス通過にあと0.01秒届かず予選敗退となった。

女子100mハードルでは中島ひとみが初、福部真子が2大会ぶり2度目の準決勝に臨む。1組を走った福部は13秒06(-0.5)で7着、2組に出場した中島は13秒02(-0.2)で7着。ともに決勝への壁は厚かったが、この種目で日本が成長した姿を示した。
男子400mハードルは1組の井之上駿太が8着(49秒73)、2組の小川大輝が6着(50秒08)、5組の豊田兼が8着(51秒80)でそろって予選敗退。男子走幅跳も、予選B組に入った橋岡優輝が最終3回目に7m95(+0.4)をジャンプしたが、決勝進出にあと3cm届かない全体13位。津波響樹は同組17位(7m42/+0.1)、伊藤陸(スズキ)はA組16位(7m68/+0.7)にとどまった。

海外勢に目を向けると、今大会最初の世界新記録は、やはりこの男が生み出した。男子棒高跳のアルマント・デュプランティス(スウェーデン)だ。
6m00に7人もが挑む空前のハイレベルにあって、ただ1人別次元のジャンプを見せ続ける。5m55、5m85、5m95、6m00、6m10をいずれもあっさりと1回でクリア。今季6mジャンプを連発してきたエマノイル・カラリス(ギリシャ)が食い下がったが、デュプランティスは6m15も1回で成功。失敗とパスを繰り返したカラリスが、6m20をクリアできずに優勝が決まる。そしてバーは、人類初の「6m30」へ。
デュプランティスは1回目、2回目ともにクリアしたかに見えたが、わずかにバーが揺れて落ちる惜しい跳躍を連発。そして、最終3回目。今度こそバーは落ちず、その瞬間が訪れた。今年4度目となる世界新記録で3連覇を達成。初めて世界を制したのが21年の東京オリンピックだった。4年の月日を超え、無観客だった国立競技場が大観衆で埋まり、スタジアムに鳴り響く大歓声を独り占めした。

このほかにも好記録が続々と生まれ、女子ハンマー投ではカムリン・ロジャーズが2投目に史上4人目の80mオーバーとなる世界歴代2位の80m51を放って2連覇、パリオリンピックを含む世界大会3連勝を飾った。銀、銅メダルは中国勢が獲得。趙傑が世界歴代10位の時刻記録にあと8cmと迫る77m68、18歳の張家楽は自身のU20世界記録(77m24)に迫る77m10をマークした。
女子100mハードルはディタジ・カンブンジ(スイス)が世界歴代7位タイの12秒24(-0.1)で自身初の世界タイトルを獲得。姉のムジンカは世界室内選手権60mを2度制しているスプリンターだ。世界記録(12秒12)保持者のトビ・アムサン(ナイジェリア)が12秒29、グレース・スターク(アメリカ)が12秒34で2位、3位に続いた。





