Ryo Nakagawa, Creative Director, designed WCH Tokyo 25 logo (© Uta Mukuo)
オリジナル掲載日:2024.11.27
中川 亮(デザイナー)|「SUGOI」が世界の共通語になる大会に
1991年以来34年ぶりに東京で開催される世界陸上。その大会を象徴するロゴを手掛けたのが、中川亮だ。
一般公募により368点の中から見事に選ばれたそれは、都市コードの「TYO」をモチーフに優美かつ躍動感あふれる。そして、醸し出される日本の伝統美。スポーツとデザインをこよなく愛する中川のロゴに込めた想い、そして、積み上げてきたキャリアで築いた“美しさ”とは―。
決められた枠すら、自分のデザインへ
―東京2025世界陸上のロゴが中川さんの作品に決まりました。その一報を聞いたときの率直な気持ちを教えてください。
中川 やっぱり嬉しかったですね。コンペや今回のような一般公募では、僕自身がどれだけ良い作品ができたと思っても、選ばれるかどうかはわからない。審査の場に自分が行って説明することはできませんし、どういう方たちがどういう基準で選ぶのかがわからないのが難しいところです。デザイナーにもいろいろなタイプがいて、それこそ感性豊かで感覚的につくる人もいますが、僕はデザインに着手する前にまず分析をし、何が求められて、どういった基準でデザインしたらいいのかという情報の整理をしてからつくるタイプ。発注者とつくり手との言葉による共有を大事にし、双方が同じ位置で作品と対峙できるように言葉を合わせながらデザインする方なので、そういう点ではコンペや公募は僕にとっては難しいのです。なので、今回選んでいただいた連絡をもらったときはとても嬉しかったです。
―ロゴを制作するにあたり、どんな規定があったのでしょうか?
中川 そこが今回は面白くて。2019年に国際陸上競技連盟が「ワールドアスレティックス(日本語略称:世界陸連)」に名称を変更した際にロゴを一新しました。それに伴い、以降の世界陸連が主催する大会はすべて、そのロゴの外枠、つまり扇型を使うことが決まっています。今回も同様で、外枠の扇形と「WORLD ATHLETICS CHAMPIONSHIPS」とをいう文字を使用するのがテンプレートで、扇形の中と「TOKYO 25」の文字をデザインしてください、というのが要件でした。一般的なロゴの公募ですとデザインは自由なことが多いので、こういう決まりがあるはとても珍しいです。それ以外にロゴに求めるものとしては、具体的な言葉では「東京らしさ」「スポーツの躍動」といったものがありました。
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photographs by 椋尾 詩