Students interview Yuko Arimori and Naoki Koyama to highlight the WCH Tokyo 25
マラソンメダリスト・有森裕子さん マラソン日本代表・小山直城選手に中高生が取材 ー 東京2025世界陸上の魅力を発信
東京2025世界陸上財団は、東京都が進める「中高生Webサイト(仮称)」の取組と連携し、中高生による東京2025世界陸上関連の取材を実施しました。
取材に参加したのは、中高生12名。彼らは、国立競技場で行われた第109回日本陸上競技選手権大会、東京都庁で開催中の「東京2025世界陸上ワールドアスレティックス・ミュージアム(MOWA)」を訪れ、有森裕子さんや小山直城選手らに直接インタビューを行い、東京2025世界陸上の魅力を探りました。
この記事では、中高生が東京2025世界陸上の注目ポイントや大会準備の裏側を取材した様子をお届けします。
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取材に参加した中高生メンバー
・2025年7月5日(土)第109回日本陸上競技選手権大会・国立競技場
・2025年7月6日(日)東京2025世界陸上ワールドアスレティックス・ミュージアム(MOWA)・東京都庁

りっせん記者(中学3年生)、オイヤン記者(中学3年生)、こうしん記者(中学3年生)、まさき記者(中学2年生)、しずな記者(高校2年生)、のんのん記者(高校2年生)

そうや記者(高校1年生)、りさ記者(高校2年生)、ほだか記者(中学1年生)、あやね記者(高校3年生)、なつき記者(中学3年生)、たかけん記者(高校2年生)
また、東京2025世界陸上のスポンサーである「朝日新聞」から、元記者の芳垣文子さんに参加してもらい、中高生に向けて「取材の心得」を伝授していただきました。
- 世界陸上はトップ・オブ・トップの戦い(マラソンメダリスト 有森 裕子さん)
- 自国開催のアドバンテージを活かした準備をしたい(マラソン 小山直城選手)
- 陸上に関心がない人でも楽しめる工夫がある(MOWA クリス・ターナー ヘリテージディレクター)
- 東京2025世界陸上のテーマは、「こどもに夢を届ける大会」(東京2025世界陸上財団)
世界陸上はトップ・オブ・トップの戦い
マラソンメダリスト 有森 裕子さん

日本陸上競技選手権大会が開催されている国立競技場に伺い、有森裕子さんにインタビューを実施しました。有森さんは、1991年の世界陸上東京大会などに出場されており、日本陸上競技連盟の会長に就任した今年、再び東京で世界陸上が開催されることに対する思いを語りました。
りっせん記者:1991年の世界陸上東京大会出場時の思いを聞かせてください。
有森さん:1991年の世界陸上は私にとって初の日本代表戦でした。世界から集まった選手たちは終わった後に握手やハグをして自分が負けても勝った選手に“おめでとう”を言っていました。世界で戦う選手は敵というより同志。ライバルではあってもスポーツを通して自分を前進させてくれる、そういう存在なんだと教えてもらえた大会であるとともに、1つの競技で競うことを通じて人間として大事な繋がりができる、その大切さを教わった大会でした。
オイヤン記者:世界陸上は陸上選手にとってどんな大会だと思いますか?
有森さん:世界陸上は記録によって出場できる枠が決まっているので、出場できない国もある。まさに世界のトップ・オブ・トップの戦いで、本当の意味で陸上の世界一を決める大会です。
しずな記者:アスリートとして、陸上競技のどういう部分に魅力を感じていますか?
有森さん:私はスポーツが生きることにもたらすエネルギーに興味がありました。高校から陸上部に入って一生懸命競技を頑張る中で、 自分自身がどんどん変わっていきました。陸上というものが生きる力を促してくれると実感しました。
のんのん記者:その魅力を踏まえて中高生世代にはどんなところに注目して観戦してほしいですか?
有森さん:シンプルに手と足、体全体を使ってそれを極めるとこんなことができるんだというのを見てほしいですね。 こんなに速く走れるんだ、こんなに重いものをあんなに遠くに飛ばせるんだ、こんなに高く飛ぶんだという。人間の体がこれだけの可能性を持っているところを観てください。
有森さんは現役引退後、日本陸上競技連盟の役員になりました。マラソンだけではなくトラックやフィールド競技も観るようになり、改めてさまざまな競技のおもしろさや身体の可能性に気づきました。多くの人にも関心を持ってもらいたい、と語ります。
陸上界のトップを走ってきた有森さんの言葉一つ一つには説得力があり、ご自身のパワフルなエネルギーに中高生は力をもらっていました。
また、インタビューを終えた中高生は、世界陸上においても使われる通常は入れない国立競技場のバックヤードを見学しました。記者が記事を書く「プレスルーム」、選手が取材を受ける「ミックスゾーン」、「記者会見場」および「カメラマンの控室」、「選手の招集場所」、選手が競技前の準備を行う「ウォームアップルーム」を見学し、メディア取材の様子や競技前後の選手を目の前で観ることができました。
そして、最後に実際に競技を観覧席で観戦。このときはトラックで女子100mハードル、フィールドで男子棒高跳が行われており、選手や来場者の熱を肌で感じることができました。

自国開催のアドバンテージを活かした準備をしたい
マラソン 小山直城選手

東京2025世界陸上の男子マラソンに出場が決定した小山直城選手にインタビューを行いました。小山選手に世界陸上への意気込みと中高生へのメッセージを聞きました。
あやね記者:(パリオリンピックにも出場した小山選手の経験を踏まえ、)パリではどんなことが大変でしたか? それをふまえて今回の自国開催の世界陸上の目標や意気込みを教えてください。
小山選手:パリまで飛行機で大体13時間の移動時間があって、時差もあって大変だったなという印象があります。今回は9月中旬に世界陸上が開催されるということで、気温が高く湿度もあります。でもこの環境を知っているのは我々日本人選手だけ。そういう意味では多少有利かなと思っています。日本開催なので皆さんが応援に来てくれると嬉しいです。たくさんの応援を力に変えて最後まで元気な姿でゴールできるように頑張りたいです。
たかけん記者:自分の走りのここを見て欲しいなというポイントありましたら教えてください。
小山選手:レース戦略の組み立てが得意な点ですので、走る位置取りやコース取りを見てもらいたいです。
たかけん記者:どんなレースの組み立てを考えていますか?
小山選手:気温が高くてハイペースにならないと予想してます。大きい集団にしっかり最後まで付いていって、 ラストは10キロぐらいからどんどんペースが上がっていくと思うので、そこでしっかり対応できるような準備をしていきたいと思います。
そうや記者:陸上競技を続ける上で、どのようなことをモチベーションにしてきましたか?中高生の頃、試合に出れないこともあったかと思いますが、どういう思いで自分を奮い立たせていましたか?
小山選手:まず、陸上が好きだったというのがありました。結果が出なかったり、苦しいことやつらいこともありましたが、原点である“走ることが好き”ということを思い出して、頑張れたのかなと思っています。中学生の頃から自分で考えて、自分の好きなことを突き詰めるということを大事にしてきました。自分の意志を持って、やると決めたことをやっていくことは本当に大切だと思っています。
そうや記者:高校3年の時に初めて全国大会の代表になって、走られたと伺いましたが、 その時にどのような思いを持たれましたでしょうか。そして緊張していたと思いますが、その緊張を力に変えるためにどのようなことを行いましたか。
小山選手:自分自身にとって初めての全国大会でした。もちろん緊張もしましたが、逆に初めてということで無我夢中で、緊張があった中でもしっかり走れました。緊張は仕方ないと思っていつも走ります。
あやね記者:大きな大会だと緊張すると思いますが、どういうことをしていますか?
小山選手:失敗する時のことを考えると緊張してしまうと最近思うことがあって、成功したイメージ、勝つイメージを持つように意識しています。
ほだか記者:マラソン選手になると決めたのはいつだったのでしょうか。
小山選手:中高生の頃は陸上を仕事にできるとは全く考えていなかったですね。だから陸上がダメでも勉強の方でいけるように両方とも頑張るように意識していました。でも、高校生の頃に大学から勧誘をしていただけたので、そのタイミングで次のステージでもやっていこうかなというふうに考えはじめました。
りさ記者:高校生だと今から仕事を決めておかないと大学も決まらないと焦るところもあるんですけど、部活も勉強も両立して、自分の夢であるマラソン選手になれたことを聞いて、そこまで焦りすぎなくてもいいなと思いました。
インタビューを通じて、実際に世界の大舞台で活躍しているアスリートの方でも、中高時代からこれまで目の前のことを積み重ねたことを知れたのが大きく響いたようでした。

陸上に関心がない人でも楽しめる工夫がある
MOWA クリス・ターナー ヘリテージディレクター

東京都庁第一本庁舎45階北展望室と2階北側展示スペースでのMOWAの展示を見学し、ディレクターのクリス・ターナーさんにインタビューを行いました。
クリスさんはスポーツジャーナリストかつ歴史学者で、WA*では世界各国で開催されているMOWAの企画を考えている役職を2002年から担っています。2023年のブダペスト大会でのMOWAの開催や、オンライン3Dミュージアムにも力を入れて企画されてきました。*WA: ワールドアスレティックス。世界陸上の主催者。
そうや記者:MOWAは各国で開催しているということですが、どのような思いで展示されていますか?
クリスさん:私たちの持っている貴重なコレクションを、スポーツに関心のない人にも観てもらえるよう、さまざまな工夫をしています。例えば、展示スペースには選手から寄贈されたシューズや男女棒高跳・走高跳の世界記録の実寸展示、ウサイン・ボルト選手らの等身大パネルなど観てふれて陸上のことが伝わる展示をしています。
なつき記者:東京都庁で展示を開催したのはなぜですか?
クリスさん:東京都庁には観光客向けのスポットがあります。例えばお土産屋さんや展望室とか。これは世界中の人を引きつけることができると思います。展望台にはとてもたくさんの人が訪れ、全員が必ずここを通るんです。そうすると、(MOWA開催期間が)11週間あるわけですから、どれくらいの人がここを訪れるか、そこに魅力を感じました。
ほだか記者:MOWAは陸上に興味を持っていない人にも陸上に触れる機会を作ることを目的にしていて、そのため、身近なところで工夫してやっているというのを聞いて、親近感がわきました。
あやね記者:あまり陸上に興味がない人でも面白く伝えるということに注力されていたのが印象的でした。選手がメダルを取りましただけじゃなくて、メッセージや歴史、選手のストーリーがあって、いろいろなアプローチでわかりやすく説明しようと努力されているのが伝わりました。
こども記者が取材したのは7月6日で、MOWAの公式オープニングに先立ち、関係者限定のオープニングセレモニーが開催された日でした。セレモニーは、展示会場の1つである東京都庁第一本庁舎2階北側展示スペースで行われました。東京都の小池百合子知事、WAカウンシルメンバー・日本陸上競技連盟の有森裕子会長、東京2025世界陸上財団の尾縣貢会長のほか、小山直城選手、レジェンド選手である谷口浩美氏、野口みずき氏が出席され、室伏由佳氏が司会を務めました。
今回の展示テーマである「東京1991-2025」を象徴するようにオープニングセレモニーでも1991年の東京大会の映像が流れました。会場には等身大パネルや選手からのシューズなどの寄贈コレクションが展示されています。9月21日まで見られますので、ぜひお越しになってみてはいかがでしょうか。展示期間はこちらをチェックください。

東京2025世界陸上のテーマは、「こどもに夢を届ける大会」
東京2025世界陸上財団

取材を通じて、世界陸上を多くの人に見てもらいたいという熱意を感じてきましたが、実は今回の世界陸上は「こどもに夢を届ける大会に」がテーマとなっていて、大会を準備する東京2025世界陸上財団の職員へのインタビューでは、こんなエピソードを聞いていました。
りっせん記者:今大会のテーマはこどもに夢を届ける大会だそうです。そこに込めた思いと、取組の内容を教えてください。
総務企画室企画 庄司直樹担当課長:未来を担うこどもたちにスポーツが持っている力や感動、 世界に挑戦する素晴らしさを伝えていきたいという強い思いがあります。こどもたちの世界陸上への観戦招待や、都内の小学校にリレー用バトンを寄贈するバトンプロジェクトを企画しています。
こうしん記者:国立競技場の会場を活かして、選手が力を発揮するための工夫と観客が盛り上がる工夫について、見どころを教えてください。
競技運営室競技運営 棚田修平課長:競技日程の9日間、毎日必ず決勝戦を入れており、初日から金メダリストの誕生が見られるプログラムにしています。観客の皆さんに毎日見に来てもらい、フルスタジアムで、選手の皆さんに最高のパフォーマンスをしてもらいたいです。
のんのん記者:マラソン競技の注目ポイントを教えてください。
競技運営室ロード競技 柴田光担当課長:マラソン競技の見どころは、35km地点過ぎから各選手が駆け引きをすることです。今大会でいえば35km地点は神保町で、40km手前の急な上り坂が勝負どころとなりそうです。選手が前に出たり下がったりの激しい戦いがあるので、そこに注目してみてください。
ほかにも中高生からは、仕事の内容や大会に向けた意気込みについての質問があり、臨場感を感じてもらえる大会を作り上げる苦労や熱意を、熱心に聞いていました。
こうしん記者:選手だけじゃなくて裏側で支える人たちも含めた全員の本気さを感じました。インタビューした職員さん達も有森さんも皆さん笑顔。自分のやっていることを楽しみながら熱意を持ってやっているのがすごくいいなと思いました。
まさき記者:インタビューやバックヤードツアーを経験して、思ったよりも沢山の人が関わっていることがわかりました。世界陸上財団の方も細かいことまで準備されていて、そういうのを踏まえた上で観戦するとさらにおもしろい。そういうことを伝えていかなきゃと思いました。

(編集後記)
2日間にわたって行われた取材は、12人の中高生にとって初めての経験。世界的な舞台をベースに記事の取材ができたことは、大きな刺激となりました。それぞれの質問への回答は世界陸上を楽しむ上で大きなヒントになります。9月の世界陸上やMOWAの楽しみ方のガイドとして読んでもらえると嬉しいです。
「中高生Webサイト(仮称)」:中高生にとっての「都政への玄関口」となるWebサイトを東京都と中高生とが一緒に制作する事業。制作メンバーである都内在住及び在学の中学生・高校生が、都政や社会の動きなどについて、中高生に向けた情報発信をおこなうため、取材を実施。
(参考)「中高生Webサイト(仮称)」制作メンバー募集について(令和7年4月25日)
この取組はWAのKids’ Athleticsと連携した取組です。
東京2025世界陸上をこどもに夢を届ける大会に

Kids‘ Athletics(キッズ・アスレティックス)は、ワールドアスレティックスによる、世界中のこどもたちが陸上競技を通じて、自信と能力を伸ばし、生涯スポーツに親しむことを促す取組です。Kids‘ Athletics(キッズ・アスレティックス)と連携した東京2025世界陸上におけるこどもの参画についての詳細はこちらをご参照ください。





